No.31 3ボルト・クーラー 2005.1.31.掲載

 おもしろ実験メニュ  前の実験  次の実験

分類順メニュへもどる

Stirling Cooler with Colliding Displacer

マブチモーターでスターリングクーラ

単三電池2本を電源として、冷凍機の実験をするための装置です。

マブチモーターの回転を減速して、クランクによって往復運動にかえ、注射器と試験管でできたスターリングクーラを動かします。

試験管のおしりは少しづつ温度が下がり、5分間で十数度ほど下がります。室温が低いならば、零下数度まで下げることが出来ます。

温度計がなくとも試験管のおしりを触るとヒャッと冷たいことでわかります。

部品の寸法と作り方

スターリングエンジン(クーラー)部

@ゴム栓

Aスチールウール
  きれいにまるめて、試験管の内径ギリギリの太さにします。芯の部分を固く巻くのがコツです。ゴム栓をはめて動かしたとき、試験管の内部で15mm〜20mmくらい移動できる長さにします。

B試験管を切断したもの
 ガラスの試験管を切断して使っています。ガラスでなくとも、なるべく熱の伝わりが悪く、スチールウールがよく滑る材質ならば良いでしょう。

 

 

Cガラス注射器10ml用
駆動装置

Dギアボックスとモーター

タミヤ模型の3速ギアボックスを使いました。ギア比は16.6:1

ギアボックスに付属のクランクにM2を取り付けて

クランクピンとします。

   

E板  10mm厚の木の板にL金具を取り付けます。L金具に注射器のピストンの根元を針金でしばり、取り付けます。

Fコンロッド

バルサ板(6mmくらい)から角棒を切り出し、右のような0.5〜1mm厚の真鍮板を取り付けて作ります。

 

G断熱材

せっかく冷えたはだかの試験管が、空気から温められないように発泡スチロールの断熱材で周りをおおいます。すきま風が入らないように作りましょう。

試験管からすぐに取り外せるようにしておくと、試験管のおしりの冷たさを手で触ってたしかめることが出来ます。

温度計の取り付け方

温度形はサーミスター式や熱電対式など、小さなセンサーだけをクーラーにとりつけられるものが良いです。

むき出しの熱電対を試験管のおしりに取り付けると、センサーの熱容量も小さいので良好です。

内部の空気に直接触れさせると早く低温を検知できます。

もちろん温度を計れなくとも、手でさわれば、冷たくなったのを感じることが出来ます。

 

 

Operation of SCCD

なぜ冷えるの?

気体を急に膨張させると冷え、圧縮すると発熱します。

右の図を見てください。

空気を左に移動させたら膨張させ、右に移動させたら圧縮します。試験管の左側は冷たくなり、右側は熱くなります。

中身のスチールウールがタイミング良く動くことで空気を移動させています。

スターリングエンジンはスターリングヒートポンプになる

このクーラはディスプレーサ衝突式(小林2001)のスターリングエンジンそのものです。つまり、コンロッドをはずし、試験管のおしりを加熱するとスターリングエンジンとして動作し、振動出力が得られます。温度差によって動くのがスターリングエンジンですが、逆にスターリングエンジンを動かすと温度差が生まれ、熱をくみ上げて別の場所へ吐き出すヒートポンプになるわけです。

スターリングクーラーはエアコンや冷蔵庫に使える?

理論的にはスターリングクーラ以上に効率の良いヒートポンプは無いとわかっています。現在でも超低温を作る冷凍機にはスターリングクーラーが活躍しています。そのような高性能スターリングクーラーの内部気体には大気圧空気ではなく加圧したヘリウムガスが使われます。

現在自動車や家庭、冷蔵庫などのコンプレッサー式のエアコンで使われているのは代替フロンやイソブタンですが、代替フロンは漏れると強力な温室効果を起こすガスです。イソブタンは可燃性で少量しか使えず、下手をすると電気を多く使いCO2排出量を増やす可能性もあります。今後はスターリングクーラーが、冷蔵庫やエアコンなど家庭でも、また自動車でも盛んに使われるようになることが期待されます。

Hand Cooler

手回しクーラー!!! (2005.6.18.追加)

上の製作では乾電池を電源にモーターとギアで駆動していますが、もちろん動力は何でもOK。

右の写真は手回し式にしたもの。2個のプーリーと2本のベルトによってハンドルの回転を10倍に増速してクランクを回します。プーリーとベルトは小型卓上ボール盤のものを借りて取り付けました。

マブチモーターよりクーラーを速く動かせるので、最初の1分間で20℃くらい温度を下げることが出来ます。あとは回す人のがんばり次第です。

 

 

おもしろ実験メニュ  前の実験  次の実験

分類順メニュへもどる