noBB について

 2000年1月31日  小林義行

1.設計の意図

 第2回テクノラリー(98年11月)には、ガラス試験管とスチールウールでディスプレーサを構成したスターリングエンジンカーを初めて持ち込みました。
 noBB(ノービービー)はその直後に、中高生の製作教材用として設計したものです。それまでの考えをさらに進めて、どのくらいまで理科工作的に、インスタントに、スターリングエンジンカーを構成できるか、ということがテーマでした。
 結果としては、設計の変更がしやすく、中学生レベルの工作力でも自分なりの工夫を色々と試すことができる模型スターリングエンジンカーになったと思います。

2.noBBの特徴

@材料・加工法・工具
 特殊な材料を使わず、普通の中学・高校の理科室・技術室ですぐに手に入る材料を使用しました。ディスプレーサキャップに化学用ゴム栓、コンロッドにフラッペ用ストロー、クランクピン他にゼムクリップ、シャシにフィルムケース、ガイドローラーにスチロールコップ、といった、理科工作でおなじみのものが材料となりました。
 このような材料でどのように目的を達するか、部品の役割上どの程度の強度で十分か、このような事を考えながら材料を探すのは面白いことです。生徒が製作する場合にも必ず自分で考えて選ばせる方法をとっています。これは、材料や設計のイロハを自然に学習することになると思います。
 加工法や工具についても、ペンチやカッター、せいぜいボール盤程度までとしました。フィルムケースを使った「オリジナルnoBB」は、理科工作的に両面テープやセロテープを使うインスタント法で製作すると、1時間で組み立てることも可能です。

Aボールベアリングを使わない 
 模型スターリングエンジンは同サイズの内燃エンジンに比べて非力です。したがって少しの摩擦力が障害になるので、ベアリングを多用することになります。
 
ノー・ボール・ベアリングがNoBBの名前のもとです。今回は、「気体がスターリングサイクルをちゃんとやれば、ちゃんと走る。」「高性能部品を集めれば高性能エンジンが動くわけではない。」そういうアピールが一つの目的ですが、もう一つは、教材としての意味があります。例えば、車重と摩擦力の関係を考えたり、車輪軸の直径を検討したり、軸受けのストローを2重にして摩擦力を減らしたり、そのような学習や工夫を期待しての課題という事です。

B各部の最適化
 ガラスは金属と比較して、その断熱性のために壁面熱流によるロスは少ない事が素晴らしいのですが、ディスプレーサピストンに熱量が流入しにくいことがケース材料としての欠点となります。それを補うために、noBBは細長い化学試験管を切らずにそのまま使用することで、加熱部、放熱部の表面積をなるべく広くとり、欠点を補っています。
 スターリングテクノラリーのノーマルサイズはコースが広いので、車体サイズの割に軽く製作することが出来ます。第2回のミニクラスsingleGAOと比べると、圧縮率を大きく、減速比を小さく設定して、車体の慣性によるフライホィール効果をより大きく利用できる設計にしました。

3.中学生〜大学生への広がり

 中高校生と教師向けの製作マニュアル「noBBの作り方」は98年12月よりインターネット上でWebページとして公開していましたが、中学校、工業高校の課題研究などの資料として多数の問い合わせがあります。大学生が製作の相談に来校したりすることもあります。第3回テクノラリーではnoBBのぺージを参考にスターリングエンジンを製作した大学生が2名入賞しました。
 静岡県島田中学では先生がページを見て自作し、さらに土浦工業高に来校して情報交換の後、技術の授業の中で生徒が製作を始めました。そこから、2名の中学生が第3回テクノラリーに参加することが出来ました。なお同校からは100人を超える生徒がnoBBタイプのスターリングエンジンカーを1人1台製作し、全員が運転に成功したという詳しい報告をいただきました。
 このような進展には驚いていますが、スターリングエンジンが力のある、魅力ある教材だということだと思います。